労働相談・労働組合づくり相談

賃金支払いの原則(定日払い・直接払い・全額払い)

雇用契約書

全臨時労働者組合(略称・全臨労)という私が以前委員長だった合同労組が結成されたのが1969年10月。今年は全臨労結成から50周年だ。私は1974年から関わる。

全臨労が問題にしたのが新聞奨学生制度という名の「前借金相殺」と「損害賠償の相殺」である。大学の入学金と授業料を貸与するので4年間新聞配達をすること。途中でやめる場合はやめる前に全額返済しなければならない。もっと凄いのは未集金を自己負担させる「切り取り制」だった。紙代を払わないで引っ越した読者がいると、それを自己負担させられる。給料袋に未集金の読者の切り取られた領収書が入ってる。「切り取り制」という名はここからきている。集金できれば賃金になるが、集金できなければ賃金はマイナスにさえなる。

労基法17条は賃金と前借金の相殺を禁止している。「切り取り制」のような事例もあり得ないと皆が思うが、実際の話だ。全臨労はこれと闘ってきた。今でもこの制度は残っている。

何故このような前近代的な50年前に問題になった話を持ち出すのか? これと似たようなことが形を変えて今でも存在するからだ。

先日相談を受けた労働者の雇用契約書を見るとは月給制の正社員である。しかしそれは形式に過ぎなく、実際は歩合給のような仕組みになっている。月給は毎月その雇用契約書の通り支払われる。しかしその内実は「仕事の完成」や「事務の処理の委託」「報酬の支払い」を前提とする民法上の請負(民法632条)の個人事業主のような扱いになっている。

完成した仕事の6割を会社が4割は労働者が受け取るかのような偽装が施される。「仕事が完成」しない場合は報酬がゼロである。その場合は最低賃金の時給が支払われる。例えば雇用契約書の月給は20万円。だから20万円が支払われる。しかし、最低賃金しか会社は支払うつもりはないので裏給与明細に借金として10万円が計上される。同じ状態が続くと毎月10万が借金になる。半年後たまたま「仕事が完成」し、報酬の4割の仕事ができた場合は借金が減る。しかし、借金が雪だるま式に増えていく現実に耐えられない労働者は病気になり、追い込まれ退職していく。

このケースは前借金ではないが同じようなものだ。借金を背負させて簡単にやめれない仕組みをつくり半強制的に働かせる手法だ。最低賃金しか支払われない場合は、時給換算だと生活できないから直ぐに転職するのが普通だ。だから雇用契約上の月給は支払う。しかし借金なので現実には半分の賃金しか支払われていないことになる。

明確な労基法違反であり、告発すれば黒白をつけることは簡単だ。労働組合として団体交渉を行った場合は資本の側はぐうの音もでない。しかし、こういうケースは資本は会社ごと潰しにかかり、団交にも応ずる可能性は低い。直ちに争議になるのは火を見るより明らかだ。当該が決断すればいつでも戦端を切る用意はできているのであるが…。

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